蒼穹の黙示録

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世界と神々、全ての始まりは此処に

 この世界には3つの国がある。
 1つはイーリスという魔法が栄えている国。
 1つはネレイデスという科学文明が栄えている国。
 1つはイデュイアという機械工作が栄えている国。
 イーリスはネレイデスとイデュイアと同盟を組み、ネレイデスとイデュイアは敵対している関係である。
 イーリス、ネレイデス、イデュイア。この3つの国、この世界は異常である。
 何故ならば、この世界は虚言に溢れている。
 人々は虚言で時には自分を守り、時には他人を傷つけさせる。
 
 神々は虚言吐きのことを「偽りのモノ」と呼んだ。逆に虚言吐きではない者は「真実のモノ」と呼んだ。
 この世界は、虚言こそが正義だった。
 真正は嫌われ、「偽りのモノ」はわざと「真実のモノ」を偽りの存在へとした。
 神々はそんな人々を見て哀れんだ。嘆いた。そして愚かなことだと思った。
 この世界は虚言だらけでどれが真正で誰が正義なのか。
 嘘の名前、嘘の人格、真実の名前、真実の人格、どれが罪でどれが正義なのか。
 これはそんなこともわからない、虚言に囚われてしまう世界の話。
 ──そして神々は願う、いつしか真正で世界が救われることを。
 そして、自分達の理想の世界へと築き上げられることを──……。
 
 ある彼女はそれまで周りに恵まれ平和な日々を過ごしていた。
「……嗚呼」
 まだ意識のある頭で、脳で、目で、口で、そう呟く。
 その頭が、脳が、目が捉えていたものはただ「イーリス万歳!」と讃える国民の姿。
「嗚呼、どうかこの世界に真実を。そしていつしか偽りのない世界へと」
 そう呟き段々と目に捉えていた景色が、人々が、声が、世界が薄れていく。
 午後の13時30分。死刑判決を下された彼女の刑が執行された時間である。
 彼女はあらぬ疑いをかけられ、そしてその疑いは晴れることなく死刑判決を下された。
 人々に冷たい目線を送られ罵倒されても彼女は人々を、世界を愛した。
 だが、その彼女の想いは届くことなく人々は彼女を裏切った。

 ある彼女は王女に仕える女騎士であった。彼女の忠誠は本物であった。
 だが皮肉にも無実であるはずの王女は罪を疑われた。彼女は必死に否定した。
 人々をそれを嘲笑うかのように認めなかった、信じなかった。そして彼女達は刑を下された。
「どうして……。誰も信じてくれないの、あの人はそんな人じゃない!」
 彼女の叫びは届くことなく彼女の生命は一つの断頭台によって掻き消されていった。
 王女がどうなったかは彼女も分かり切っている。何故彼女なのか。
 彼女は王女を守り切れなかった自分を悔やみ、王女を信じなかった人々を恨んだ。
 それはきっと、死してもずっと続くであろう。

 ある彼は心がなかった。いや、なくしたの方が正しいだろうか。感情というものが存在しなかった。
 彼は傭兵として国に雇われ、そして道具のように扱われてきた。
 家族と引き離され、孤独に生きてきた彼は人権がなかった。感情を持つことなど許されなかった。
 そんな彼にも、願望はあった、希望はあった。
 風に戦がれながら彼はただ最期の地を眺めていた。もう、あの場所へは帰ることはないだろう。
「……これでいいんだ、私は」
 髪と外套をなびかせ彼はそう、呟く。
 そして武器を持って最期の、自分の生命が終えるであろう地へと駆けていった。
 人を信じるのことの出来なかった彼が唯一信じれるような、そんな場所へ、最果てへ。

 ある彼は高貴な騎士だった。誰からも信頼され実力も確かな騎士だった。
 彼は人生を王妃に捧げていた。王を亡くしたった1人で国の頂点に立つ王妃に。
 彼の忠誠も確かだった。また、王妃からの信頼も確かだった。
 ある日、自国と敵国の戦争が起きた。彼は前線に出ることはなく王妃の傍にいた。
 王妃を任されるほど、彼は信頼されていた。彼も、命をかけて王妃を護ろうとした。
 他の騎士を想い、また彼も想って心配そうな王妃を前に彼は跪いてこう誓った。
「大丈夫です。俺も、他の者も、ちゃんと貴方の元へと帰ってきます」
「この命をかけて、最期までお守り致します、我が王妃」
 だが、その彼の誓いは果たされることはないということは、彼は知らなかった。

 人々は、彼女らは、彼らはまだ知らない。
 これが全ての、世界の全ての始まりだということを。
 皮肉なほど綺麗な声がどこからともなく聞こえる、この声は告げている。彼女、彼に。
 その声は余白からの終わりの合図であり、余白からの始まりの合図。
「さあ、起きる時間ですよ。皆さん」

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