蒼穹の黙示録

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創造神と破壊神

――コルネリア・セイクリッドが、アルトリア・セイクリッドが、戦争を起こす前……。
 コルネリア・セイクリッドは虚無の空間に生まれた。神として。そこにはコルネリアただ独りだった。
 コルネリアは何とも思わなかった。何にしろ、感情が無きにして生まれてきたからだ。
 だが、コルネリアは誰も命令されたわけでもない、謎の使命感があった。
「あらゆる生物、惑星……。そして世界を創る」
 それが、コルネリア・セイクリッドの生まれた理由だった。

 コルネリアが生まれた500年くらい後だろうか。自分と同じ神であろう者が生まれた。
「お目にかかれて嬉しいぞ。我が姉上『コルネリア・セイクリッド』」
 虚無の空間の中、アルトリア・セイクリッドと名乗った者の声が響く。
「……君は何者だ」
 コルネリアが問う。こんな虚無の空間の中で生物など誕生するわけがない。
「だから、アルトリア・セイクリッドと言っておろう……」
「違う。君は何の使命で生まれてきた」
 その言葉を聞いてアルトリアはため息を漏らした。そんなこともわかならないのかと言わんばかりに。

「……私は破壊神、アルトリア・セイクリッド。貴様が創ったものの命を終わらせるという使命で生まれてきた」
 破壊神。
 そうか、自分は創造神。創ることは出来ても、その命を終わらせる。即ち壊すということは出来ない。
 だからか、この傲岸な態度な奴が生まれてきたのは。
「……君、神にしては妙に顔の形を変えるね」
「ん?誰が感情を持ってはいけないと決めた」
 そうアルトリアは言う。確かにそうだ。誰も決めたことじゃない。しかし、
「憐情の心を持って、役目を果たせない、とかそういうことはないね?」
 それを聞いたアルトリアが高笑いをする。まるでこちらが可笑しなことを言ったかのように。
「面白いな、貴様は。」
 くっくっ、と笑いを堪えながらアルトリアは言う。煩い奴だ。

「確かに私は貴様と違う物を持っている。感情だ。だが、私は憐情の心など決して持たない。持つのは壊す事に対しての快感だ」
「なるほど、それなら問題はないね」
「そうだろうそうだろう。むしろ壊させてくれ!惑星の儚い死、生物の死への絶望。それを見るのが私の唯一の娯楽なのだ!」
 アルトリアは声高々と言う。それにコルネリアは、
「とは言っても、まだここには惑星も生物もいないけど?」
 と、ため息交じりに言う。
「それは創造神、貴様の仕事だろう。早く私の為に『創る』のだ」
 それをアルトリアは不服そうに言う。確かに創造神の仕事だ。この500年間なにもしていなかった

「……それはそうだね。それでは手始めに、惑星を創ろうか」
 コルネリアそれを言うとすっと瞼を閉じた。一見何もしていないように見えるが……。
 刹那、虚無の空間にポツポツと小さな光が現れた。まるで泉が湧き出たかのように。瞬時に光が増えていく。
「おおう……。これはこれは」
 アルトリアが恍惚な様子で言う。この虚無の空間だったものに命が芽生えた感動からではないだろう。
「壊し甲斐がありそうだな」
「創ったばかりだからすぐには壊せないよ」
「そこは領解している。……いやはや、これは楽しみだなあ」
 そうだ、アルトリアは壊す為に生まれてきた。命が芽生えると壊したくなるのは当然だろう。

「次は惑星に住む生物だけど……。さすがに全部の惑星に生物は難しいね」
「絞るのか」
「そういうことだね」
 つまらなそうに言うアルトリアにコルネリアは返す。
 創造神、と言ってもなんでもかんでも創ればいいものではない。それに――。
「……壊しすぎて世界まで壊すとか言い出したら、大迷惑だからね」
 アルトリアを見ながらコルネリアは呟く。
 世界を壊すとなれば流石のコルネリアでも収拾がつかない。それに、コルネリアまで危害が行く可能性があるからだ。
 そうなれば創造も破壊もあったものではない。それだけは何としてでも阻止しなければ。

「何か言ったかコルネリアよ」
 さっきの呟きを微かに聞こえてたのかアルトリアはもう一度と催促する。
 それにコルネリアは答える。
「くれぐれも羽目を外さないでくれよ。破壊神アルトリア・セイクリッド」
 それにアルトリアは 「私を見くびってもらっては困るな」と、せせら笑いながら言う。
 それにコルネリアは、よしといわんばかりの頷きをする
「そちらも、頼むぞ、創造神コルネリア・セイクリッド」
「精々励むとするよ。……君もね」
「ぬかせ」

――そう、上手くやっていたはずだった。なのに。
 その何千年後、アルトリアの破壊したい欲が強まり、遂にはコルネリアまで破壊するという始末になってしまった。
 これが、哀れな神々の、人々の物語の、すべての始まりだった。

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