蒼穹の黙示録

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まだ、色あせない『青』でいられる

 ぽつり、ぽつりと終わりを告げるかのように雨が降る。
 その下に鮮やかに咲き誇る紅い花達。『それ』を見下ろし「またか」と思う。
 ここにあるものは、皆綺麗なものだった。また今度もそれは、無くなってしまったが。
 新緑の森林、月の下で輝く紫水晶、太陽の光が宿る橄欖石、日が昇る東雲。どれも綺麗なものだった。
 ――まだ咲き誇っていない深い海がただひとつ、あるが。『それ』はまだ咲かぬようにと愚かに足掻いている。
 なんとも、醜いものだ。もうここは終わるというのに。
 ぴちゃん、と音を立てて近付くと、こちらを見上げまるで自分に心があるかのように『それ』は告げる。

「みんな、生きていて欲しかった。なのにこんな、こんな」
「随分と呆気ないものですね。……所詮は人、ということですか」
「そんな、貴方、も」
「私? ……私は違います。温もりも心も、無いんですから。……つらいですか? 今、楽にしてあげます」

 そう言い『それ』に手を伸ばす。まだ暖かい『それ』は抵抗する気力もないようで呆気なく他の4つと同じものになる。
 座り込み動かなくなった、目の前のものを見つめる。自分とよく似ている、深い海の『青』。
 嘗て自分も同じ青と思っていた。いや、思わされていた。周りが深い海と言うものだからいつの間にかそう思っていた。
 そんな自分に投げられた「違う青だ」という言葉がどれだけ救われたことか。
 ただ一人だけそう言った人がいた。本人にとって何てことない一言かもしれないが、それでも。
「世界を変えてでも世界を救いたいと、思ったんですよね」
 自分でも矛盾していると思う。けれども救う理由が無いものを救うなんてこと、誰もがそんなことはしない。

 ここは救う理由がいなくなってしまった。だから行かなくては、救う理由がいるところに。
 ぽつぽつと降っていた雨が激しくなる。始まりを告げるかのように、雨が降る。
 立ち上がり後ろを振り返らず前へと進む。もう、咲き誇る紅い花になってしまったものはしょうがない。
 求めているのは紅い花ではなく、とても綺麗で、温かな光で心を満たしてくれる、そんな。
 さようなら、おやすみなさい、何回目かの世界。次はきっと。
 たった一人の世界を救う理由という君がいるから、自分は色あせない『青』でいられる。

まだ、色あせない『青』でいられる ???・?????

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